選び方の基本
子どもに合う学習サービスをどう見分けるか|相性の考え方
学習サービスの相性は、つまずいたときの反応・集中の切れ方・人に慣れるまでの回数・生活のどこに学習が入るかの4か所を家庭で見れば判定できます。評判ではなく子どもの様子から候補を絞るための観察手順と、合わないと判断するまでの目安を整理しました。
この記事について
- こんな方に向けています
- 学習サービスを検討しているが、評判ではなく子どもとの相性で選びたい保護者
- 読み終えたときの状態
- 相性を判断する観点を持ち、候補を子どもの様子に照らして選べる状態
評価の高いところを選んだはずなのに、2か月後には手つかずの教材が机の端に積まれている。よくある結末ですが、選び方を間違えたというより、何を基準に選ぶかが決まっていなかったときに起きます。資料を並べて比べたのは、料金、教材の量、実績、口コミの点数。そのどれも、子ども本人の様子とは接続していません。
「うちの子に合うか」を考えない保護者はいません。ただ、合うという言葉は、そのままでは判断に使えません。何を見れば合うと言えるのかが決まっていないので、最後は評判の良し悪しで決めることになります。
相性は、次の4か所を見ると判定できます。つまずいたときにどうするか、集中がどこで切れるか、知らない大人に慣れるまでにどれくらいかかるか、生活のどこに学習が入るか。いずれも家庭で観察できて、しかもサービス側の設計と正面からぶつかる部分です。
「相性」はサービス側の前提と子どもの現状のずれ
どの学習サービスにも、「こういう子が使う」という前提が設計に埋め込まれています。決まった時刻に机に向かえること、分からないときに手を挙げられること、1回分の量を最後までやり切れること。前提が宣伝文に書かれることはありませんが、教材の作りや進度の決まり方を見ると読み取れます。
相性が悪いというのは、この前提と子どもの現状がずれている状態です。教材の質が低いわけでも、子どものやる気が足りないわけでもありません。「自分で進度を管理できる」ことを前提にしたサービスを、まだそれができない段階の子が使えば、教材はたまります。逆の組み合わせでも、退屈という形でずれが出ます。
つまり相性の判定は、子どもを評価する作業ではなく、照合する作業です。以下の4項目は、そのために見る場所になります。1と2は新しく観察が必要で、3と4はこれまでに起きたことから読み取れます。
つまずいたときの反応を、声をかけずに5分見る
最初に見るのは、分からない問題に当たったときに何をするかです。ここが相性にいちばん強く効きます。学習サービスの違いは、突き詰めると「つまずいたときに何が起きるか」の違いだからです。
観察のしかたは決まっています。宿題や教材をやっている机から少し離れた場所で、別の作業をしながら5分だけ見ます。声はかけません。「分からないところある?」と聞いた時点で、その質問自体が助けになってしまい、普段の反応が見えなくなります。見るのは、手が止まってから次の動作までの時間と、その動作の中身です。
| つまずき方 | 見えている様子 | そのとき必要なもの | ずれやすい設計 |
|---|---|---|---|
| 止まって動かない | 数分間ページを見たまま、鉛筆が動かない | 止まっていることに気づいて声をかける人 | 提出まで誰も途中を見ない形式 |
| 飛ばして先へ進む | 空欄のまま次へ移る。最後まで終わるが正答率が偏る | 飛ばした箇所を後から拾う仕組み | 終わったかどうかだけで進度を管理する形式 |
| 適当に埋めて終える | 答えは埋まっているが、解き方を聞くと説明できない | 答えではなく途中の考え方を見る相手 | 自動採点だけで完結する形式 |
| すぐ人を呼ぶ | 数十秒で「分からない」と言いに来る | 待つ時間を意図的に作れる相手 | 聞けば即座に答えが返る形式 |
同じ「算数が苦手」でも、この4つでは必要なものが違います。止まって動かない子に自動採点の教材を渡しても、止まったこと自体が誰にも観測されません。すぐ人を呼ぶ子に常時質問できる環境を用意すると、考える前に聞く癖のほうが強まります。
1回で決めなくて構いません。得意な教科と苦手な教科で反応が変わることが多いので、両方で見ます。サービス選びに効くのは、苦手な教科のときの反応です。
集中は「何分続くか」より「切れ方」を見る
「集中力がない」という言い方は、選択の役に立ちません。続いた時間を測っても同じです。見るべきなのは、どういうときに切れるか、そして切れた後に自力で戻れるかどうかです。
切れ方には型があります。時計を横に置いて数日記録すると判別できます。
| 切れ方 | 判別の手がかり | 効く対処 | 効かない対処 |
|---|---|---|---|
| 時間で切れる | 教科や難度に関係なく、だいたい同じ時間で手が止まる | 1回分が短く区切られた教材、休憩を挟む前提の設計 | 声かけの回数を増やす |
| 難度で切れる | 解ける問題は続くが、手応えのある問題に入ると急に止まる | その場で詰まりを解消できる相手がいる形式 | 学習時間を短く区切る |
| 刺激で切れる | 音や人の動きのたびに顔が上がる。教科や難度とは無関係 | 場所と時間帯を変える。通知が視界に入らない環境にする | 教材を替える |
型が分かると、変えるべきものが1つに絞れます。刺激で切れているのに教材を替えても、状況は動きません。学習が続かない原因が教材ではなく運用側にある場合の切り分けは、通信教育が続かない原因はどこにあるかで扱っています。
もう1つ見るのは、切れた後です。数分ほど別のことをして自分から戻るなら、続く長さは大きな条件になりません。一度切れると再開できないなら、1回を短くして回数を増やす設計のほうが合います。
人への慣れと生活リズムは、これまでの記録から読み取れる
残りの2項目は、新しく観察しなくても分かります。すでに起きたことを思い出すか、記録を見返せば足ります。
知らない大人に慣れるまでの回数
習い事の初日、学年が変わったときの担任、久しぶりに会う親戚。そうした場面で、自分から話しかけるまでに何回かかったかを数えます。1回目から普通に話す子もいれば、5回目あたりでようやく声が出る子もいます。良し悪しではなく、単なる所要回数です。
この回数が多い子の場合、体験1回の様子で判断すると、ほぼ確実に実力より低く見えます。担当者が毎回替わる形式も、慣れる過程が毎回リセットされる分だけ負担が重くなります。回数が少ない子なら、担当が固定かどうかは優先度の低い条件です。人が介在する形態そのものの選び分けは、個別指導と集団指導はどう選び分けるかで扱っています。
学習が実際に入っている時間帯
理想の時間割を作らないでください。1週間、実際に机に向かった時刻と、その日の帰宅時刻・習い事・就寝時刻だけを記録します。1日3行で足ります。
この記録を見ると、学習が入る余地のある時間帯は思っていたより少ないことが分かります。決まった曜日と時刻を求めるサービス、毎日短時間を前提とするサービス、いつやってもよいサービスでは、必要な余白の形が違います。すでに埋まっている枠に押し込む計画は初月で崩れます。きょうだいがいる家庭では、下の子の就寝時刻が実質的な締め切りになっていることもあります。
評判のよいサービスが自分の子に効くとは限らない理由
利用者が多いサービスは、多くの家庭で成立するように作られています。長所ではありますが、設計上は想定を平均に寄せる必要があるという意味でもあります。想定から離れた位置にいる子ほど、評判と実際の使い勝手が食い違います。
口コミの見え方にも構造的な偏りがあります。合わなくて早い段階でやめた家庭は、感想を書き残さないまま離れていきます。残りやすいのは、続いた家庭の声と、強い不満が残った家庭の声です。真ん中が抜けた分布から平均を推測すると、判断を誤ります。
もう1つ、口コミの多くは教材や指導そのものを評価しています。ところが家庭で実際に問題になるのは、端末を置く場所、声をかける時刻、丸つけを誰がやるかといった運用側です。教材の評価が高いことと、その運用が自分の家庭で回ることは別の話です。
上の子に合ったものが下の子に合わないのも、同じ理由です。同じ家庭でも、4つの観測項目は子どもごとに違います。上の子のときの手応えは、下の子については情報になりません。
有名さが無意味というわけではありません。利用者が多いほど使い方の情報は集めやすく、サポートの体制も一定以上には整っている傾向があります。ただしそれは、合うかどうかとは別の軸に属する話です。
体験で見るのは教材ではなく子どもの反応
体験や無料期間で、大人はつい教材の出来や説明のうまさを見ます。そこは比べても差が出にくい部分です。見るのは子どもの側です。
まず、体験の中で「分からない場面」が発生したかどうかを確認してください。解ける問題だけで終わった体験は、判断材料としてほとんど価値がありません。申し込みのときに、いま詰まっている単元を扱ってほしいと伝えておくと、観測したい場面が体験中に起きます。
そのうえで見る点は3つです。
- 分からなくなったときに、子どもが何らかの形で意思表示をしたか。そして相手がそれに気づいたか。気づかれずに流れた場面が1回でもあれば、その形式では同じことが繰り返されます
- 終わった直後ではなく、30分ほど経ってからの発言。直後は場の空気に引っ張られて「楽しかった」「疲れた」に寄ります。時間を置いてから内容について何か言うなら、中身が残っています
- 保護者が同席しているときと、離れたときで様子が変わるか。可能なら途中から席を外して、その前後を比べます
体験を複数入れる場合、同じ日に2つ入れるのは避けてください。2つ目は疲れた状態で受けることになり、条件がそろいません。日を分けて、できれば同じ曜日・同じ時間帯にします。
合わないと判断するまでに何回見るか
最初の1〜2回の反応は、相性ではなく「新しさ」への反応です。上振れも下振れもします。初回が楽しかったから合っている、初回で泣いたから合わない、というのはどちらも早すぎます。
編集部としては、担当者がつく形式なら同じ相手で4回程度、教材が定期的に届く形式なら配信1サイクルを1回と数えて2サイクルを目安に置くことを勧めます。ただし回数そのものより、同じ現象が3回続いたかどうかで見るほうが確かです。3回続くなら、それは偶然ではなく設計とのずれです。
やめる前に確認することがあります。変えられる条件が残っていないか、です。開始時刻、1回分の量、場所、保護者が同席するかどうか。このうち1回に1つだけ変えて、2週間ほど様子を見ます。同時に2つ変えると、どちらが効いたのか分からなくなり、次の判断ができなくなります。
一方で、回数を待たずに止めてよい場合もあります。子どもが強い拒否反応を示す、睡眠や食事に影響が出ている、こちらの質問に事業者側から説明が返ってこない。この3つは相性の問題ではなく、続ける条件そのものが崩れている状態です。
続けるか替えるかを具体的に決める段階に入ったら、原因が教材にあるのか運用にあるのかを切り分ける必要があります。その手順は教材やサービスを乗り換えるかどうかの判断基準にまとめています。
今週やること
候補を絞るのは観察のあとです。順番を逆にすると、集めた資料の量に引きずられて、結局は評判で決めることになります。
- 今週のうちに、苦手な教科をやっているところを5分だけ、声をかけずに見る。手が止まってから次に何をしたかをメモする
- 1週間、実際に机に向かった時刻を記録する。予定ではなく実績を書く
- これまでの習い事や進級の場面を思い出し、知らない大人に慣れるまでの回数を数える
- 3つがそろってから、候補を2〜3に絞る。このとき見るのは「つまずいたときに何が起きる設計か」の1点
観察の記録は、きれいにまとめる必要はありません。日付と、止まった時刻と、そのとき何をしたか。この3つが並んでいれば、体験に申し込むときに何を試してもらうかが決まります。サービスの型ごとの違いと契約前に確認する項目は、小学生のオンライン学習サービスの選び方で扱っています。観察を終えた状態で読むと、見るべき型が先に絞れます。