形態で比べる

個別指導と集団指導はどう選び分けるか

個別指導と集団指導の差は手厚さの量ではなく、進度を誰が決めるか・質問がどこで生まれるか・他の子がいるかという3つの構造にあります。子どもの現状に対してどの構造が効くかで選び分けるための判断材料をまとめました。

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この記事について

こんな方に向けています
塾の形態を決めかねている保護者
読み終えたときの状態
子どもの状態と目的に応じて形態を選べる状態
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個別指導の説明会では「一人ひとりの理解度に合わせて進めます」と言われ、集団指導の説明会では「同じ目標の子と一緒に取り組めます」と言われます。どちらも嘘ではなく、どちらも否定できません。持ち帰ったパンフレットを並べても、はっきり違うのは料金と曜日だけ、というところで止まります。

決まらない原因は、比べる軸が「手厚さ」になっていることにあります。手厚さで並べれば、個別指導が自動的に上に来ます。講師1人が見る人数が少ないほど目が届くのは事実だからです。ところが実際には、集団に移してから伸びる子がいます。手厚さという軸では、この現象を説明できません。

個別と集団を分けているのは、手厚さの量ではなく3つの構造です。進度を誰が決めるか、質問がどこで生まれるか、他の子がいるかどうか。このうちどれが子どもの現状に効くかで、選ぶ形態は変わります。

手厚さではなく、3つの構造差で並べる

判断軸 個別指導 集団指導
進度を決める人 講師と家庭。戻ることも先へ進むことも、その週のうちに変えられる カリキュラム。学年と時期で内容が決まっており、個人の事情では動かない
進度が合わないとき 決める材料がないと、その日の内容が学校の復習に流れる 分からないまま次の単元へ進む。取り残しは自分で埋めることになる
質問が生まれる場所 講師が手元を見て、止まった時点で声をかける 子どもが自分で気づき、授業後や次回に持ち込む
他の子の存在 ない。比較されない代わりに、到達度の基準が講師の言葉だけになる ある。基準は見えるが、下位に固定されると意欲が落ちる
欠席したとき 振替や内容の巻き戻しで吸収しやすい 授業は止まらない。欠席分は各自で追いつく

この表のうち、家庭の判断を大きく左右するのは「進度」と「質問」の2行です。他の子の存在は、同じ環境でも効く方向が子どもによって逆になるため、単独では決め手になりません。

差1|進度を決める人がいないと、個別の自由度は使えない

個別指導では進度を変えられます。ただし「変えられる」ことと「適切に変えてもらえる」ことは別です。1対1の授業は、毎回「今日は何をやるか」を決めるところから始まります。決める材料を誰も持っていない場合、その時間は学校で今週習った範囲の復習に流れます。復習そのものが悪いわけではありませんが、それなら家庭でもできる内容に月謝を払っていることになります。

個別の自由度が効くのは、戻る場所と期限が決まっているときです。「分数の割り算まで戻って、冬までに小数と分数の計算を通しでやる」のように範囲を言えるなら、カリキュラムに縛られない形態は強く働きます。どこで詰まっているのかを家庭で先に見当づける手順は、算数が苦手な小学生への対応で扱っています。

集団指導では、この決定が外から与えられます。決める仕事がない代わりに、合っていなくても進度は止まりません。学年をまたいで戻る必要がある状態で集団に入れると、授業時間の大半が理解できないまま過ぎていきます。

判断の手がかりは単純です。「今学期のうちに何を終えたいか」を保護者が1行で言えるかどうか。言えるなら個別の自由度を使えます。言えないなら、まずカリキュラムのある側に乗せて、進度を外から借りたほうが動き出します。

差2|質問は「できる」かどうかではなく「出る」かどうか

個別指導の案内には「いつでも質問できる」と書かれています。ただ、質問を口に出せない子は、1対1でも口に出しません。人数が減れば質問が増える、という関係にはなっていません。

実際の差は、質問が出ないときに何が起きるかにあります。個別では講師が手元を見ているので、鉛筆が止まったことに気づけます。気づいた側から声をかけられるため、子どもが言語化できなくても授業は進みます。集団では、止まっていることが見えないまま次へ進む場合があります。演習の時間に講師が机の間を回る形式なら差は縮まりますが、板書中心で演習が宿題に回る形式では、詰まった時点から翌週まで放置されます。

体験授業で見る点は、雰囲気が明るいかどうかではありません。子どもが黙って手を止めたとき、講師が何秒で気づいたか、気づいたあとに答えを教えたのか、詰まった位置を聞き返したのかです。この観察は形態を問わず使えます。子どもの反応から相性を判断する観点は、子どもに合う学習サービスの見分け方にまとめてあります。

差3|他の子の存在は、上にも下にも働く

集団の利点として挙げられる「切磋琢磨」は、実際には3つに分けられます。周りが解き終わる速度で自分の遅れを体感できること、この問題はできて当たり前なのかという基準が見えること、授業日には必ずやるという時間の固定です。3つ目は学力と関係なく効きます。

一方で、下向きに働く場合があります。クラスの下位に位置し続けると、「自分はできない」という認識が固定されます。席順や成績の掲示がある塾では、この効果が強く出ます。個別にはこの圧力がない代わりに、自分がどのくらいの位置にいるのかが分からず、到達度の基準が講師の言葉だけになります。

どちらに転ぶかは、過去の場面から推測できます。周りができていて焦った経験のあとに、翌週やり直したことがあるなら、他者の存在は上向きに働いています。焦ったあとで手をつけなくなったのなら、集団に入れても同じことが起きます。

個別が向くのは、詰まっている場所が特定できているとき

個別指導が構造的に有利になるのは、次のような状況です。

  • 学年を戻る必要がある。割合や分数のように、後の単元が前提にしている内容でつまずいている場合、集団のカリキュラムでは戻れません
  • 学校の進度と大きくずれている。遅れている場合も、先に進んでいて授業が退屈になっている場合も、合わせられるのは個別だけです
  • 曜日を固定できない。習い事やきょうだいの送迎で毎週同じ時間を空けられないなら、振替のきく形態でないと欠席が積み上がります
  • 人前で間違えることへの抵抗が強く、集団だと発言も質問もしなくなる
  • 書く・話すのに時間がかかり、集団のペースでは処理が追いつかない

ただし個別を選ぶ場合は、「学習計画を誰が作るか」を入塾前に確認してください。塾として計画を作り定期的に見直す運用なのか、担当講師の裁量に任せる運用なのかで、同じ「個別指導」でも中身が変わります。講師が交代したときに何を引き継ぐのかも、あわせて聞いておきます。

オンラインで個別指導を受ける場合は、これに加えて画面越しの条件(手元が見えるか、質問を声に出せるか)が判断に入ります。その部分はオンライン個別指導が向いている子・向いていない子で扱っています。

集団が向くのは、ペースを外から与えたいとき

  • 家庭で学習が始まらない。授業日と宿題という外部の締切があるだけで、机に向かう回数は変わります。家庭側の設計から直したい場合は、学習習慣がつかないときに最初に見直すこともあわせて読んでください
  • 基礎は理解しているが演習量が足りない。理解の確認より問題数が要る段階では、1対1の時間を使うより、まとまった演習が組まれている形態のほうが量を確保できます
  • 目標の時期が決まっている。カリキュラムの進度が、そのまま締切として働きます
  • 周りができていると分かったときに、自分でやり直せるタイプである

集団を選んだ場合、家庭に残る仕事は「ついていけているか」の確認です。テストの点数だけでは遅れが見えません。宿題を終えるのにかかる時間が月ごとに伸びていないか、解き直しの量が増えていないかを見ます。ここが崩れていると、席に座っているだけの時間が増えます。

費用構造の違いは「同じ予算で何回受けられるか」に出る

判断軸 個別指導 集団指導
1コマあたりの負担 講師が見る人数が少ないぶん、単価は高くなりやすい 同じ時間を複数人で分けるため、単価は下がりやすい
同じ予算で組める形 回数か教科数のどちらかを絞る形になりやすい 週複数回・複数教科を組みやすい
増えやすい追加費用 試験前などにコマを足すと、その月の負担が動く 季節ごとの講習や模試など、日程が全体で決まっているもの
予算が崩れる場面 「あと1コマだけ」を重ねたとき 講習期にまとまった請求が来たとき

同じ月謝で比べると、個別は回数か教科数のどちらかを絞ることになります。ここで起きやすい失敗が、手厚いほうがよいと考えて個別を選び、予算に合わせて週1回・1教科まで削るケースです。間隔が空くと前回の内容を思い出すところから始まるため、実際に進む量が落ちます。

個別を選ぶなら、回数を減らしても成立する範囲を先に決めてください。単元を絞る、期間を区切る、家庭でやる部分と塾でやる部分を分ける、といった形です。全教科を薄く見てもらう使い方は、かけた費用に対して得られるものが最も小さくなります。

比較の段階で見落としやすいのは、月謝以外の費用です。入会金、教材費、季節ごとの講習、模試やテストの代金は、塾によって扱いが違います。月額だけを横に並べず、1年間の合計で比べてください。サービス全体を同じ基準で比較する手順は、小学生のオンライン学習サービスの選び方にまとめています。

決める前に確認することと、決めきれないときの進め方

体験授業は、可能なら同じ週に両方受けます。1か月空けると、子どもの調子や学校行事の影響が混ざって、形態の差なのか状況の差なのかが分からなくなります。

体験のあとに子どもへ聞くのは、感想ではなく「今日どこが分からなかったか」です。分からなかった場所を言葉にできたなら、その場で理解の位置を把握できたということです。「楽しかった」「ふつう」しか返ってこない場合は、別の日にもう一度受けたほうが判断材料になります。

面談で聞く内容は、形態によって変わります。

  • 個別:学習計画を誰が作り、どの頻度で見直すか。講師の交代はどのくらい起きるか。振替の条件と期限
  • 集団:クラス分けの基準と、変更されるタイミング。欠席したときに何が提供されるか。1クラスの人数と、演習の時間があるかどうか
  • 共通:最低利用期間、解約の申し出期限、1年間で発生する費用の見込み

どちらとも決めきれない場合は、期間を区切って一方を試します。そのとき、「何が変わっていたら続けるか」を先に紙に書いてください。宿題への取りかかりが早くなった、家で質問が出るようになった、といった観察できる変化で構いません。基準を決めずに始めると、数か月後も同じ迷いのまま、月謝の支払いだけが続きます。