家庭学習と保護者
学習習慣がつかないときに最初に見直すこと
毎日の学習が定着しないとき、原因は子どものやる気ではなく開始の条件にあります。止まっている場所を「始められない・終わらない・再開できない」の3つに切り分け、時間・場所・量・合図のどれを直すかを1つに絞るための手順をまとめます。
この記事について
- こんな方に向けています
- 毎日の学習が定着せず、声かけが続かない保護者
- 読み終えたときの状態
- 習慣が定着しない原因を切り分け、変える箇所を1つに絞れる状態
「宿題は終わったの」と聞くところから毎晩が始まります。返ってくるのは「あとでやる」。思い出したときには21時を過ぎていて、机に向かわせても10分ほどで切り上げになる。翌日もまた同じ会話をする。これが数か月続くと、うちの子には習慣化が向いていないのではないか、という結論に傾きます。
続いている家庭とそうでない家庭の差は、子どものやる気の量にはあまりありません。差が出るのは、学習が始まる条件が決まっているかどうかです。やる気は日によって上下しますが、始まる条件のほうは設計できます。条件を決めないまま声かけだけを増やすと、保護者の声が唯一の開始スイッチになり、声をかけられない日は必ずゼロになります。
見直す範囲は、時間・場所・量・開始の合図の4つに絞ります。教え方や励まし方は、この4つが決まった後に効いてくるもので、順番を逆にすると何が効いたのか読めなくなります。関わる範囲そのものを整理したい場合は、家庭学習で保護者はどこまで関わるかで別に扱っています。
「習慣がつかない」には3つの別々の状態がある
一言で習慣がつかないと言っても、実際に止まっている場所は家庭ごとに違います。大きく分けると、始められない、始めても終わらない、一度空くと戻らない、の3つです。原因も対処も別なので、混ぜたまま手を打つと外れます。
| 始められない | 始めても終わらない | 一度空くと戻らない | |
|---|---|---|---|
| 見えている様子 | 声をかけないと机に向かわない。「あとで」が繰り返される | 席には着くが途中で離れる。1問目で手が止まる | 数日続いた後、休日や行事を挟むとゼロが並ぶ |
| つい取る対応 | 声かけの回数を増やす、時間を決めて叱る | 「集中しなさい」と言う、そばで見張る | 空いた分をまとめてやらせて取り返す |
| その対応で起きること | 声かけ自体が合図になり、大人がいないと始まらない状態が固定される | 中断の原因(量や難度)が残るので、翌日も同じ場所で止まる | 翌日の負担が倍になり、さらに手をつけにくくなる |
| 実際に変える箇所 | 開始の合図と場所 | 1回の量と難度 | 記録の単位と、再開する日の量 |
3つのうち、家庭で最も多く見られるのは1つ目です。そして1つ目を放置したまま量や教材を変えても、開始できない状態は変わりません。順番としては、まず開始の条件を直し、それでも終わらない場合に量へ手を入れます。
止まっている場所は1週間の記録でわかる
どこで止まっているかは、記憶ではなく記録で判定します。1週間、次の3つだけを書きます。
- 何時に始めたか
- 何分で終わった、または中断したか
- 誰かが声をかけたかどうか
内容や出来については書きません。丸つけの結果を混ぜると、記録が評価に変わり、続かなくなります。期間を1週間にするのは、平日と休日で条件が大きく変わるためです。3日では平日の傾向しか出ません。
1週間分がそろったら、次のように読みます。声かけがないと始まらなかった日が5日以上あるなら、止まっているのは開始です。開始はできているのに終了まで届かない日が多いなら、量か難度です。前半は続いたのに後半でゼロが並ぶなら、再開の設計がない状態です。
複数に当てはまることもありますが、その場合も最初に手を入れるのは開始です。開始が安定しないと、量を調整しても効果を測るサンプルがそろいません。
開始の合図は生活動線の中に置く
「毎日19時から」と決めても続かないのは、19時という時刻が家庭の生活の中で必ず訪れる出来事ではないからです。習い事の曜日、帰宅時間のずれ、きょうだいの予定で、時刻は簡単に動きます。動いた瞬間に合図が消え、代わりに保護者の声かけが合図になります。
合図として機能するものには条件があります。毎日必ず起きること、子ども自身が気づけること、学習する場所から物理的に近いこと。この3つがそろうと、声をかけなくても始まる回数が増えます。
| 時刻で決める | 先行する動作に紐づける | 場所に紐づける | 保護者の行動に合わせる | |
|---|---|---|---|---|
| 合図の例 | 19時になったら | 夕食の食器を下げたら | いつもの席に座ったら | 保護者が台所の片付けを始めたら |
| 崩れにくさ | 生活時間が一定なら強い | 生活時間が動いても残りやすい | 場所を専用にできていれば強い | 保護者の在宅が前提になる |
| 崩れる条件 | 習い事・帰宅時間の変動、長期休み | 先行動作が発生しない日(外食など) | その場所を食事や遊びと兼用している | 保護者の帰宅が遅い日、下の子の対応が入る日 |
| 向いている家庭 | 平日の帰宅時間がほぼ一定 | 曜日ごとに予定が変わる | 学習専用の机や棚を用意できる | 低学年で、一人ではまだ始められない段階 |
長期休みに崩れる家庭は、時刻で決めているケースがほとんどです。学校がない期間は生活時間の基準そのものがなくなるので、先行動作に紐づけ直すほうが持ちます。朝食を食べ終わったら、といった形です。
場所を変えると開始までの手数が減る
開始が重い家庭では、机に向かうまでに何をしているかを数えてみると、手数が多いことがあります。自室に上がる、ランドセルを開ける、教材を探す、筆箱を出す、机の上を片付ける。ここまでで5工程あり、そのどこかで止まると学習は始まりません。
減らし方は単純で、教材と筆記具を学習する場所に置いたままにします。片付ける先を「元の場所」ではなく「次に使う場所」にすると、翌日の準備が0工程になります。
自室とダイニングのどちらがよいかは一律には決まりません。判断の手がかりは3つあります。1つ目は、保護者が視界に入る必要がある段階かどうか。質問が出る学年では、離れた部屋にすると質問が発生した時点で止まります。2つ目は、その場所が他の用途と兼用かどうか。食事の30分前に始めると必ず中断されます。3つ目は、きょうだいの音や動きが視界に入るかどうかです。同じ部屋で下の子が遊んでいる状況は、注意力の問題ではなく環境の問題として扱えます。
量は「必ず終わる量」まで落とす
開始の条件を直しても最後まで届かない場合は、1回の量を減らします。減らすことに抵抗が出るのは自然ですが、ここで比較すべきなのは「多い量をやる日」と「少ない量をやる日」ではありません。「量が多くてゼロになる日」と「少なくても終わる日」の比較です。
終わったという状態を毎日作ると、翌日の開始が軽くなります。逆に、終わらないまま中断する日が続くと、机に向かうこと自体が中断の記憶と結びつきます。
量の決め方には手がかりがあります。記録の1週間のうち、最も短時間で終えた日の量を基準にしてください。それが現実にこなせている量です。そのうえで、区切りを時間ではなく到達点で置きます。「20分やる」ではなく「この5問まで」とすると、終わりが本人から見えます。
教材そのものが余っていく状態になっている場合は、量の問題が別の形で出ています。たまった分の扱いは通信教育が続かない原因はどこにあるかで整理しています。また、量ではなく難度が原因で止まっているとき、特に算数のように前の単元が前提になる教科では、量を減らしても解決しません。その場合は算数が苦手な小学生へのつまずきの見つけ方のように、どこまで戻るかを決める作業が先になります。
できなかった日を「途切れ」として扱わない
習慣づくりで最も再現しやすい失敗は、1日できなかったことを失敗として扱い、翌日に取り返させることです。取り返す日は通常の倍の量になるため、その日も終わりません。2日連続で終わらなかった状態ができ、3日目にはもう手をつけなくなります。
再開を設計に入れるというのは、次のような扱いにするという意味です。
- 数え方を日単位から週単位に変える。週に何日できたかで見ると、1日の欠けが失敗になりません
- できない日をあらかじめ決めておく。習い事のある曜日や、行事の翌日を最初から対象外にすると、その日は欠けになりません
- 空いた日の分を翌日に足さない。前日の残りは切り捨てて、翌日は通常の量に戻します
- 3日以上空いた後の再開日は、通常より少ない量から始めます。再開の日は「戻れたかどうか」だけを見ます
長期休みや体調不良で1週間以上空いたときも同じです。空白の長さに合わせて量を戻すのではなく、空白が長いほど再開の量を小さくします。
変えるのは1つだけ、2週間ずつ
ここまでで、合図・場所・量・記録の4か所が候補として挙がりました。全部を一度に変えたくなりますが、同時に変えると何が効いたのか分からなくなり、次に崩れたときに戻す場所も分かりません。
順番は、合図、場所、量、記録の数え方の順です。合図と場所は開始に効き、量は継続に効き、記録の数え方は再開に効きます。1つ変えたら2週間そのまま続け、記録を見て判断します。2週間にするのは、1週間だと行事や体調の影響を吸収できないためです。
2週間たっても開始できた日が増えない場合は、合図の選び方が家庭の生活と合っていない可能性が高いので、表に戻って別の型を試します。学年が低く、そもそも一人で始められる段階に達していない場合は、開始まで付き添う前提で設計を組み直すほうが早く、優先すべきことは小学校低学年の家庭学習は何をどこまでやるかで扱っている内容と重なります。
よくある詰まりどころ
合図を決めたのに、本人が合図に気づかない
先行動作が子ども自身の行動になっていない可能性があります。「保護者が食器を洗い終わったら」は子どもから見えませんが、「自分が食器を運んだら」なら本人の動作です。合図は本人が実行する動作に置き換えてください。
始めるが、5分で「終わった」と言ってくる
到達点の設定が粗いときに起きます。「音読」ではなく「音読の1ページ目を2回」のように、終わりが一意に決まる形にします。それでも短い場合は、実際にその量で足りているのかを1週間の記録で確認してから増やします。最初から増やすと、開始の条件まで一緒に壊れます。
きょうだいで同じやり方が通用しない
合図も量も、生活動線と現在の学力に紐づくため、同じ家庭内でも別々に設計する必要があります。上の子に効いた時刻を下の子に適用すると、下の子は待たされる時間が発生し、開始のコストが上がります。共通にできるのは場所と記録の様式までです。
やり方を変えても3週間で元に戻る
戻る時点で何が起きたかを記録から探します。多くは、行事や長期休みで先行動作が消えた週です。合図が生活の変化に弱い型だったということなので、時刻型から動作型へ、あるいは休み期間だけ別の合図を用意する形に切り替えます。教材やサービスそのものを変えるかどうかは、この切り分けを終えてから判断してください。原因が運用側にあるまま変更すると、同じ状態が新しい教材でも再現します。