家庭学習と保護者
小学校低学年の家庭学習は何をどこまでやるか
低学年の家庭学習は、内容を足すことよりも、机に向かうまでの手順と読む力の土台を先に固めるほうが後の学年で効いてきます。優先するもの、量と時間の決め方、先取りの扱い、きょうだいがいる場合の回し方を整理しました。
この記事について
- こんな方に向けています
- 小学校低学年の子どもの家庭学習をどう組み立てるか迷っている保護者
- 読み終えたときの状態
- 低学年で優先することが分かり、量と関わり方を決められる状態
小学1年生の宿題は、音読とプリント1枚で5分もかからずに終わることがあります。手が空いた子どもがそのままテレビの前に行くのを見て、これで足りているのか気になり、書店でドリルを1冊買い足します。最初の1週間は進みますが、3週目あたりから机に座るまでの声かけが長くなり、買ったドリルは途中のページで止まります。
低学年で先に手当てすべきなのは、内容の不足ではありません。1〜2年生で扱う漢字や計算は量が限られていて、後からでも取り返せます。取り返しにくいのは、机に向かうまでの流れと、文章を読み取ろうとする姿勢のほうです。この2つは学年が上がるほど生活が埋まっていくため、後から入れる隙間がなくなります。
ここでは、低学年のうちに確保しておくもの、後回しにしてよいもの、1日の量と時間の決め方、先取りの扱い、きょうだいがいる場合の回し方を順に扱います。
低学年で確保するものは「3年生以降に効くか」で決める
低学年で扱うものは、後から取り返せるものと、取り返しにくいものに分かれます。分ける基準は、3年生以降に学習の負荷が上がったときに、あるかないかで差が出るかどうかです。
3年生になると、算数に割り算と単位換算が入り、理科と社会が加わり、漢字の量が増えます。国語の文章も、場面の説明が長くなります。ここで手が止まる子の様子を見ると、計算そのものができないというより、問題文の条件を最後まで読み切れていないことが多くあります。読み取りの負荷が上がったところで、それまで短い文でしのげていた部分が表に出ます。
| 低学年で扱うもの | 確保しておく量 | 後回しにした場合に起きること |
|---|---|---|
| 音読・読み聞かせ | 1日5〜10分。長さより毎日続くこと | 高学年で読む速度を上げようとしても、そのためのまとまった時間を取りにくい |
| 計算の反復 | 1日1ページ以下。速さより正確さ | 3年生以降、計算に時間を取られて考えるところまで手が回らない |
| 漢字 | 学校の進度で足りる | 量が増える学年でまとめて詰めることになるが、取り返しは可能 |
| 学習を始めるまでの手順 | 入学後の数か月で固定する | 習い事と宿題が増えてから作り直すことになり、負担がはるかに大きい |
| 字を書く姿勢・筆圧 | 書く量が少ないうちに直す | 書く量が増えてから直すのは難しく、書くこと自体を嫌がる原因になる |
| 上の学年の内容の先取り | 余力があるときだけ | ほとんど支障はない |
この中で、時期を決めて手をつけないと入らないのは「学習を始めるまでの手順」だけです。ほかは量を調整すれば後からでも動かせます。何を優先するか迷ったら、まず開始の手順を固定し、残った時間に読むことと計算を入れる、という順にすると崩れにくくなります。
読む力は国語の勉強ではなく、全教科の入り口として扱う
低学年の教科書やドリルは、文章が短く、答えの候補も限られています。そのため、書いてある条件を正確に読み取れていなくても、雰囲気で答えが合うことがあります。合っているうちは、読めていないことに保護者も気づけません。
確認の仕方は簡単です。文章題を1問選び、声に出して読ませたあと、「何を聞かれているか」を自分の言葉で言わせます。式を立てる前の段階で止まるなら、計算の問題ではありません。ここが分かると、ドリルの量を増やすべきか、読む時間を増やすべきかの判断が変わります。単元ごとのつまずきをどこまで戻って直すかは、算数が苦手な小学生への対応で扱っています。
学校から出る音読の宿題は、聞く側の関わり方で意味が変わります。聞き流して「上手だったね」で終えると、読み上げる練習にしかなりません。読み終わったあとに、内容について1つだけ質問します。「この人はどうしてそうしたの」のように、書いてあることを言い直せば答えられる質問で足ります。答えられないときは、もう一度読ませます。
読み聞かせは、自分で読めるようになったあとも続ける価値があります。子どもが自力で読める文章の水準と、耳で聞いて理解できる文章の水準には差があり、後者のほうが先に伸びます。読み聞かせは、まだ自力では読めない水準の文章に触れさせる手段になります。
時間の目安は下限ではなく上限として使う
家庭学習の時間について「学年×10分」という目安が広く使われています。1年生なら10分、2年生なら20分という数え方です。この目安は、下限として使うと機能しにくくなります。
時間で区切ると、終わりの判断が子どもの手から離れるからです。10分やることになっている子は、時計を見ながら手を止めます。早く終わらせても得るものがないため、急ぐ理由がありません。
代わりに、量で決めて、時間は上限として置きます。「計算1ページと音読1回」のようにその日の分を先に決め、それが目安の時間を大きく超えて終わらないなら、量が多すぎるか、内容が学年に合っていないと考えます。判断材料になるのは次の2つです。
- 同じ量にかかる時間が、数週間かけて短くなっているか。短くなっていれば、内容は定着しています
- 途中で手が止まる場所が、毎回同じ種類の問題かどうか。同じなら量ではなく内容の問題で、減らしても解決しません
集中が切れる前に終えることを優先します。低学年では、1日あたりの時間より、最後までやり切った日数のほうが効いてきます。時間を延ばして泣きながら終わらせた日があると、翌日の開始が重くなり、その分を取り返すのに数日かかります。
内容より先に、机に向かうまでの手順を固定する
低学年の子どもに「やる気になったら始める」は成立しません。開始の判断を本人に任せると、毎日交渉が発生します。交渉の相手をしていると、保護者のほうが先に疲れます。
最初に決めるのは、内容ではなく次の4つです。
- 場所:リビングで構いません。学習机を用意しても、低学年のうちは保護者の視界に入る場所のほうが進みます
- 開始の合図:時刻ではなく、生活動線の中で直前に必ず起きる行動に紐づけます。「帰ってきて手を洗ったら」「おやつを食べ終わったら」のように、毎日起きることの直後に置きます
- その日の分の見え方:机の上にその日の分だけを出しておきます。ドリルを1冊そのまま置くと、終わりが見えないぶん、始めるまでが長くなります
- 終わったあとの扱い:丸つけをその場でやるか、後にするかを決めておきます。その場でやると直しまで一度に終わりますが、間違いが多い日は指摘が続いて険悪になります
保護者が隣にいる時間は、低学年では長めでかまいません。ただし、いるのは教えるためではなく、開始と終了を見届けるためです。教える範囲をどこまでにするか、いつ手を引くかは、家庭学習で保護者はどこまで関わるかで扱っています。
手順を決めても定着しない場合は、量や合図の設定を1つずつ見直す作業になります。その進め方は学習習慣がつかないときに最初に見直すことにまとめています。
先取りは進度の貯金ではなく、余白の使い道として考える
先取りの利点ははっきりしています。学校で扱う内容を先に見ているため、授業中に余裕が生まれます。手を挙げる回数が増える、指名されても答えられる、という状態は、低学年の子どもにとって学校を居心地のよい場所にする材料になります。3年生以降で通塾を考えている場合、範囲に一度触れていることが接続を楽にする面もあります。
副作用も同じところから出ます。
- 「知っている」と「できる」の区別が、この年齢ではつきません。一度見た内容だと既知感が先に立ち、授業を聞かなくなることがあります
- 家庭で教えた手順と、学校で教わる手順が食い違うことがあります。筆算の書き方、式の立て方、単位の書き添え方には、学校で指定された形があります。低学年ほど「やり方が2つある」状態に混乱します
- 進度が家庭の管理下に入るため、止まったときに戻す基準が家庭にしかなくなります。学校の進度に沿っていれば、遅れているかどうかは自動的に分かります
余力をどこに向けるかは、次のように分かれます。
| 学年を超えて進める | 同学年の内容を深くする | 教科の外側を伸ばす | |
|---|---|---|---|
| 具体的にやること | 上の学年の教材を順に進める | 文章題、発展問題、書く量の多い問題 | 読書、暗算やそろばん、図鑑や地図を見る時間 |
| 授業への影響 | 既知感で聞かなくなることがある | 授業で扱う内容と直接つながる | ほとんど影響しない |
| つまずいたときの戻り先 | 家庭で判断するしかない | 学校の進度に戻れば足りる | 戻るという概念がない |
| 保護者の負担 | 教える役が必要になる | 問題を選ぶ手間がかかる | 少ない |
| 学年が上がったときに残るもの | 進度の貯金は追いつかれた時点で消える | 読み取る力と手順を書く力が残る | 処理の速さや語彙が残る |
先取りに進むかどうかは、2つが揃っているかで判断できます。学校で習った範囲を、日をおいて解き直しても正確にできること。そして、その日の家庭学習が時間の上限に届いていないこと。どちらかが欠けている段階では、同じ学年の内容を深くするほうが取りこぼしが少なくなります。
きょうだいがいる家庭は、同じ時間帯に別々の内容を回す
きょうだいの学習を別々の時間帯に回すと、保護者の拘束時間が人数分になります。平日にそれを続けられる家庭は多くありません。開始時刻はそろえて、内容だけを分けるのが現実的です。
学年差がある場合は、見る順番を決めておきます。開始時に上の子のその日の分を一緒に確認し、その後は下の子に付き、終了時にもう一度上の子の丸つけに戻る形にすると、上の子が放置されている感覚を持ちにくくなります。上の子が先に終わっても下の子が終わるまで席を立たせない、という決め方をする家庭もありますが、これは不満がたまりやすく、終わったら自由にするほうが続きます。
年子や同学年のきょうだいの場合は、同じ教材を並べると比較が始まります。速さの比較が起きると、遅いほうは雑に終わらせるか、途中で手を止めます。教材を変える、席を離す、開始時刻を10分ずらす、のいずれかで比較が起きない状態を作ります。
下の子が上の子の教材をやりたがることがあります。止める必要はありませんが、進度としては数えないでください。やりたがっているのは内容ではなく、上の子と同じ扱いを受けることのほうです。逆に、上の子が下の子の学年の内容に戻ることを嫌がる場合は、戻す作業だけ別の時間帯に移します。
通信教育を人数分契約する場合、たまる量も人数分になります。1人分でも消化しきれない月がある前提で量を決めたほうが安全です。教材がたまる原因と処理の仕方は、通信教育が続かない原因で扱っています。
次にやること
まず1週間、次の3つだけを記録します。専用の用紙は要りません。カレンダーの余白で足ります。
- その日にやった量(ページ数か単元名)
- かかった時間
- 途中で手が止まった場所
1週間分を並べると、量が多すぎるのか、開始の手順が定まっていないのか、特定の内容でだけ止まっているのかが分かれます。量の問題なら減らします。手順の問題なら、開始の合図を生活動線の別の場所に移します。内容の問題なら、その単元だけ前の学年に戻します。
宿題が5分で終わってしまう
足すなら1つだけにします。音読の回数を増やすか、計算を1ページ足すか、どちらかです。2つ足すと、うまくいかなかったときにどちらを減らすかの判断ができなくなります。紙とタブレットのどちらで足すかを迷う場合は、タブレット教材と紙教材で違いが出る場面を、教科と学年に分けて確認してください。
字が雑で、書き直しをめぐって毎回もめる
書く量が少ない低学年のうちのほうが直しやすい部分です。ただし、全部を直そうとすると学習そのものが止まります。直す対象を「今日はこの1文字」のように限定し、それ以外は指摘しません。筆圧が弱くて薄い場合は、鉛筆の濃さを変えるだけで改善することがあります。
周囲が先取りをしていて焦る
先取りで作った進度の差は、学年が上がると追いつかれます。残るのは進度ではなく、読み取る力と、机に向かうまでの手順のほうです。焦りを感じたときは、進度を比べる前に、記録した量と時間が上限に収まっているかを見てください。収まっているなら、足す余地があるかどうかを落ち着いて判断できます。