形態で比べる
オンライン個別指導が向いている子・向いていない子
オンライン個別指導の向き不向きは、子どもの性格ではなく「画面越しに分からないと言えるか」「手元が見える形になっているか」「家に座れる場所があるか」で決まります。向いていない場合に時間帯・場所・同席で変えられる範囲もあわせて整理しています。
この記事について
- こんな方に向けています
- オンラインでの個別指導を検討しているが、自分の子どもに合うか判断できない保護者
- 読み終えたときの状態
- 向き不向きを子どもの具体的な様子から判断し、試すかどうかを決められる状態
オンライン個別指導を検討していて判断が止まるのは、料金でも講師の経歴でもなく、「うちの子は画面の前で最後まで座っていられるのか」という一点です。送迎が要らないことも、家で受けられることも分かっている。それでも申し込みの前で止まるのは、教室なら講師が横から気づいてくれるはずのことが、画面越しでも届くのか分からないからです。
この不安は、半分は当たっています。オンラインでは、対面の講師が無意識に使っていた情報のいくつかが確実に減ります。ただし減る種類は決まっているので、何が減るのかが分かれば、補えるかどうかは家庭でも判断できます。向き不向きを決めるのは子どもの性格ではなく、減った分を子ども自身が言葉で埋められるか、埋めきれない分を家庭と講師が設計で埋められるか、の2点です。
そもそも個別にするか集団にするかを決めていない段階であれば、個別指導と集団指導はどう選び分けるかを先に読んでください。ここではオンラインという形式に固有の条件だけを扱います。
画面越しで最初に失われるのは「察してもらうこと」
教室の講師が見ているのは、子どもの答えだけではありません。鉛筆が止まった時間、消して書き直した回数、手を動かす前に一度顔を上げたかどうかを、説明しながら同時に見ています。子どもが「分かりません」と言わなくても講師から声をかけられるのは、この情報があるからです。
オンラインでは、ここが減ります。減り方は3つです。
- 手元が見えない。カメラは子どもの顔に向いているのが標準です。ノートに何を書いているかは、書き終えて見せるまで分かりません。途中で迷った跡は届きません。
- 沈黙の意味が読めない。対面なら、考えている沈黙と固まっている沈黙は表情と手の動きで区別できます。画面越しでは通信の遅れや音声トラブルの可能性も混ざるため、講師は判断を保留しがちになります。
- 注意の向き先が分からない。視線が教材から外れたとき、対面なら何を見たのかまで分かります。画面には、外れた先が映りません。
補う条件も3つに対応します。手元は、書画カメラや2台目の端末で映すか、「いま書いたものを見せて」と講師が頻繁に言う進め方かどうかで変わります。沈黙は、「どこまで分かったか」を区切って聞く形なら黙り続けずに済みます。注意の向き先は、後述する場所の作りで変わります。取り戻しきれない分を子ども自身が言葉で埋められるかが、次の判断軸です。
同じ「個別」でも、オンラインと対面では見えているものが違う
| オンライン個別 | 対面の個別指導(教室) | 訪問型(自宅に来てもらう) | |
|---|---|---|---|
| 手元の見え方 | カメラの置き方しだい。顔だけを映す構成だと、書き終えて見せるまで分からない | 常に見えている。書き直しや、止まっていた時間も伝わる | 常に見えている。教材の並べ方や姿勢まで把握される |
| 集中が切れたときの戻し方 | 声で呼び戻すしかなく、画面の外へ出られると手段がない | 距離を詰める、教材を差し替えるなど手段が複数ある | 対面と同じ手段が使えるが、家庭内の音や人の出入りが邪魔をする |
| 講師を替えるときの負担 | 地理の制約がなく候補が広い。交代も切り出しやすい | 教室に在籍する講師の中から選ぶことになる | 移動範囲の制約が大きく、候補が限られる |
| 保護者が様子を見る方法 | 画面の外にいれば、子どもに気づかれずに観察できる | 授業中の様子は見えず、報告で知ることになる | 同じ家にいるため気配が伝わり、子どもが意識しやすい |
見落とされやすいのは下2行です。オンラインは手元が見えない弱点を持つ一方で、講師の交代がしやすく、保護者が気づかれずに様子を見られます。合わないと感じたときに動かしやすいのは、実はオンラインです。
向いている子に共通するのは、分からないを音にできること
積極的な子が向いている、という話ではありません。授業が成立するために必要な、具体的な動作です。
- 分からないときに「分かりません」と声に出せる。内容を説明できなくても、その一言が出れば講師はそこで止まれます
- 黙り込んでも、しばらくすると自分から顔を上げる。固まったまま時間が過ぎるタイプだと、画面越しでは気づかれるまでが長くなります
- 「32ページの3番」のような指示で、自分でページを開ける。教材上の位置を音声だけでたどれるかは、対面よりはっきり差が出ます
- 自分の書いた答えを読み上げられる。読み上げは、講師が手元を見られない分の代わりになります
- 画面の向こうの大人と一対一で受け答えができる。離れて暮らす親族とのビデオ通話で自分から話すかが手がかりになります
全部そろう必要はありません。上の2つ、「分からないと言える」と「固まったままにならない」が満たされていれば、残りは数回の授業で身につきます。どちらも難しい場合は、次の章の対策を最初から組み込んでおくほうが失敗しにくくなります。
学年では一律に決まりません。ただし、文字を読むこと自体にまだ負荷がある段階では、画面上の教材を目で追うだけで消耗します。紙の教材を手元に置き、画面は講師とのやり取りだけに使う構成にすると負荷が下がります。
向いていない兆候は、オンラインを始める前から出ている
試さないと分からない、と考える必要はありません。家庭で見えている行動からかなり予測できます。
- 学校や教室で、分からないときに手を挙げられない。対面でできないことが、画面越しにできるようになることはまずありません
- 集中が切れたときに体が動く。立ち上がる、寝転ぶという切れ方をする子は、対面なら講師が距離を詰めて戻せますが、画面の外に出られると手がありません
- 学習に使う端末が、ゲームや動画に使っている端末と同じ。毎回、切り替えの負荷がかかります
- 家の中に、一人で座って作業できる場所がない
当てはまったからオンラインは無理、という意味ではありません。1つ目は指導の進め方、2つ目は授業時間の長さ、3つ目と4つ目は家庭側の準備の問題で、打つ手がそれぞれ違います。
合わないときにまず変えるのは、時間帯と場所
うまくいかないとき、最初に検討されるのは「講師を替える」か「やめる」です。ただ、講師が原因とは限りません。先に動かすのは、授業の外側にある条件です。
| 授業中に起きていること | 先に疑う原因 | 最初に変えること | それでも変わらないとき |
|---|---|---|---|
| 前半は答えるが、後半になると解答が止まる | 時間帯。学校と習い事のあとで、すでに消耗している | 開始を早める。1回を短くして回数を増やせるか相談する | 1回で扱う量を減らし、演習を家庭学習の側へ移す |
| 質問されても黙ったままになる | 質問の粒度が大きすぎるか、講師との関係がまだ浅い | 「どこまで分かったか」を区切って聞く形にしてもらう。最初の数回は保護者が画面の外に座る | 対面との併用に切り替え、対面の回で質問する練習をする |
| 開始から数分で席を立つ | 場所。視界に入るものと生活音 | 机の向きを変え、正面に何もない配置にする | 1回を短くし、頻度を上げる形式に変える |
| 授業は成立するが、次の授業までに何もしない | 区切りの強さ。画面を閉じた時点で学習が終わる | 授業の最後の数分で、次までにやることを子ども自身に書かせる | 進捗の管理まで含む形式(併走型)に切り替える |
保護者の同席は有効ですが、座る位置で効果が変わります。子どもの正面ではなく、画面に映らない後方です。正面に座ると、子どもは講師ではなく保護者の顔を見て答えるようになり、講師からは反応が読めません。同席は期間を決め、慣れたら外します。ずっと横にいると、子どもが講師に直接聞く必要がなくなります。
対面との併用は、費用が増える代わりに確実な手です。週1回だけ対面にして残りをオンラインにすると、対面の回で見つかったつまずきをオンラインの回で反復できます。ただし2つが連携していないと、同じ内容を別の言い方で2回受けることになり、子どもが混乱します。どちらを主にするかを先に決めてください。中学受験が目的なら、演習量と進度管理という別の条件が加わるため、中学受験でオンライン塾を使う場合のメリットと注意点を先に確認してください。
家庭で用意するのは機材4点と、視界の設計
- 通信。授業が壊れるのは映像が乱れるときではなく、音声が途切れるときです。映像が止まっても会話は続きます。無線が不安定な部屋なら、有線でつなげる位置を先に探してください
- 端末。教材と講師の顔を同時に見られる画面の大きさが要ります。スマートフォンだと表示を切り替えながら進めることになり、そのたびに手が止まります
- 音声機器。端末内蔵のマイクとスピーカーは生活音を拾い、講師の声も部屋に響きます。イヤホンかヘッドセットにすると、聞き返す回数が減ります
- 場所。背景に何が映るかより、子どもの視界に何が入るかで決めます。正面にテレビ、横にきょうだいの遊び場という配置だと、注意は必ずそちらへ行きます。壁に向けるのが最も安全です
加えて、紙とノートを手元に置きます。画面の中だけで完結させると書く量が減り、書いたものを講師に見せる手順も曖昧になります。何をどう見せるかは初回に決めます。通信が切れたときの連絡手段も同じで、接続が落ちると子どもは自分で対処できず、連絡先が決まっていないとその日の残り時間がまるごと失われます。
体験授業で見るのは、講師の説明より子どもの反応
体験では講師の説明の分かりやすさに目が行きますが、判断材料としては弱い部分です。説明は体験用に整えられますし、継続する授業では「子どもが何を言えるか」で進み方が決まります。
- 講師が問いかけてから答えるまでの間の長さと、その間に子どもが何をしていたか(考えていた/画面を見ていない/固まっていた)
- 一度でも自分から口を開いたか。質問でなくても「ここ書きました」で十分です
- 「手元を見せて」と言われたとき、自分でカメラや紙の向きを直せたか。毎回保護者がやることになると運用が続きません
- 終わったあとの言葉。「楽しかった」より「次はここをやるって言われた」のほうが、続く見込みは高くなります
1回で決めないでください。初回は環境そのものに慣れる時間が要るため、本来の様子は2回目以降に出ます。目安は2〜3回です。ただし、泣く、強く拒否する反応が出た場合は回数を重ねずに止めます。
相性そのものの観察方法は子どもに合う学習サービスをどう見分けるかで、サービスの型ごとの違いや契約前に確認する項目は小学生のオンライン学習サービスの選び方で扱っています。
申し込む前にやること、よくある詰まりどころ
体験を申し込む前に次の4つを済ませると、1回の体験から得られる情報が増えます。
- 授業に使う予定の場所で、家族の誰かとビデオ通話を1回する。音声が途切れないか、子どもの視界に何が入るかを確認する
- 直近1週間の様子から、「分からないと言えた場面があったか」「固まったままの時間があったか」の2つだけ記録する
- 体験の時間帯を、継続する場合に実際に使う時間帯に合わせる
- 同席の有無と、する場合の座る位置を決めてから当日を迎える
きょうだいがいて、静かな場所を確保できない
場所で分けられないなら、時間で分けます。授業の間だけ下の子を別室に移せるか考えます。難しければ、生活音が入る前提だと講師に先に伝えます。伝えてあれば、反応が鈍いときに聞こえていない可能性を講師が先に疑えます。
子どもが画面の中の自分の顔を気にして集中しない
自分の映像を非表示にできるかを初回に確認します。講師からは見えたまま、子どもの画面にだけ自分が映らない状態にできれば解決します。設定できない仕組みなら、この点だけで候補から外して構いません。
授業のある日以外、何もしない
オンラインは画面を閉じた時点で区切りがつくため、次の授業までの管理が家庭側に残ります。授業の最後の数分で、次までにやることを子ども自身に書かせると途切れ方が変わります。毎日の学習そのものが定着していない場合は原因が習慣の側にあるので、学習習慣がつかないときに最初に見直すことを先に見てください。
講師が毎回変わる形式で、うまくいかない
担当が固定かどうかは、オンラインでは対面以上に効きます。手元が見えない分、その子の癖を知っている講師のほうが沈黙の意味を早く判断できるからです。契約前に、担当を固定できるか、交代を依頼できるか、交代しても進度が引き継がれるかを確認してください。